社長のブログBlog

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革靴は命の器である

――西成の下町工場より――

靴をつくることは、命をつなぐこと。



かつて大阪・西成には、数えきれないほどの婦人革靴工場があった。
しかし今や、その灯はひとつ、またひとつと消えていく。
安価な靴が市場を席巻し、中国製の品質にも追いつかれ、
職人たちは静かにハンマーを置いていった。

私たちの業界は、いま「努力では届かない時代の流れ」と向き合っている。
それでも私が、いまだこの地で靴を作るのは――
“革靴は命の器”だと信じているからだ。

革は、家畜の副産物である。
人のために一生を終えた命のかけらを、
私たちは手のひらで温め、形に変える。
その革に、履き手が、靴として新たな景色を見せてあげる。
それが、せめてもの供養であり、感謝のかたちだと思っている。

しかし、この想いはなかなか広がらない。
革靴の良さも、職人の手間も、
SNSの波にかき消されてしまう時代だ。
それでも私は、百年企業を目指すと大ぼらを吹く。
根拠はない。けれど、倒れるその瞬間まで
“ファイティングポーズ”だけは崩さないと決めている。

そんな中、今年10月24日、初めて地域の小学校――まつば小学校の三年生たちが
社会授業の一環で工場見学に来てくれた。
二十数名の子どもたちが、真剣な眼差しでスタッフの手を見つめ、
革の匂いに鼻をひくつかせ、
「これ、牛さんの皮?」とつぶやいた。
その瞬間、私は胸の奥で小さな炎が灯るのを感じた。

妻は笑って言った。
「あなたの地域貢献は、これ止まりやね」
確かにそうかもしれない。
でも、あの日見学に来た子どもたちが、
いつかこの町を歩く時、
「ここで革靴を作ってたおじさんがいた」と思い出してくれたら、
それで十分だ。

命の循環を感じ、手の温もりを信じ、
地場産業に誇りを持って働く――
「他者への思いやりと足るを知る」
この精神を、次の時代に手渡したい。

M&Aでも、後継者でも、形は問わない。
大切なのは、「理念が生き残ること」だ。
革靴を、ただの履き物ではなく、
“命を歩かせる器”として作り続ける人が、
この町にひとりでも残るように。

西成の片隅で、私は今日も革を作る。
叩く音は、祈りのリズムだ。
命に、手仕事に、そして未来に――
ありがとう。

――――
松井製靴株式会社
代表取締役 松井成和

本日、SNSにこんな投稿をしました。

「宿無しの ゲリラライブだ 聖地での」



ホテルもポスターも、ちゃうやろ!
名曲も生き様も、聞いてきた
政治家は、国民のために泥をかぶって
選挙カーも、ウグイス嬢もいらん
西成には舞台がある
ビールケースとハンドマイク、タスキのみ
ロックで政策、語ってくれ🎤

大阪選挙区の候補者が、立派なホテルで第一声を上げる姿をニュースで見ました。しかし、どうしても心が動きませんでした。
ポスターにも演説にも「ロック」を感じなかったのです。

私にとって、政治とは評論ではなく、行動と決断の世界です。現場に降りて、血の通った問題を、泥をかぶってでも解決する力が必要だと思っています。

私は西成で婦人革靴をつくるメーカーの端くれです。
この町には、宿無しもおれば、夜のネオンで中国人のママとデュエットを楽しみに懸命に生きる人もいる。
カラオケスナックの歌声が、今日を生きる力になっているのです。

そうした日々の積み重ねの中で見えてくる「政策」こそが、政治に求められるべきではないでしょうか。

「ロック」とは何か。
それは、誰よりも低いところに降りて声を拾い上げる姿勢だと私は思います。
安全な場所から理想を語るのではなく、現場に立って、分け合い、支え合う未来を描くこと。

私が尊敬する医師・中村哲さんや、国境なき医師団の方々のように、政治家にも「現場に身を置き、汗を流す胆力」が必要です。

私たちの革靴づくりもまた、社会との対話です。
誰のために、どんな一歩をつくるのか。
それを考えることは、政治と地続きの行為なのかもしれません。

選挙のたびに感じるのは、政治に任せきりにせず、
私たち一人ひとりが「どういう社会をつくりたいか」を表現していくことの大切さです。

このブログが、どこかで誰かの「一歩」を後押しできれば幸いです。

この世は、時に理不尽で、社会は厳しい。
貧困も差別も、すぐにはなくならない。
だからこそ人間には「心の支え」が必要だ。
それが宗教であれ、思想であれ、お金であれ──
人によって違えど、「絶対に信頼できる何か」の存在が、
人を強く、真っすぐに立たせてくれる。

誠実に生きた親の背中は、
子にとって一生のお守りとなる。
そしてその子は、迷いながらも、立派な社会人へと歩み出す。
最初の一歩。最初に地面に触れるのは、靴だ。

私たちは願います。
誠実な作り手が生んだ靴が、
履き手の人生にそっと寄り添い、
往来の安全を見守る“お守り”となることを。

資本主義が「人間の欲望」をもマネタイズしていくこの時代に

誠実をマネタイズすることは、簡単ではない。
でも、人の欲をマネタイズするより、ずっと健全だと思う。
LINE登録やサブスクで心を操るより、
本当に良い靴を、地道に届けたい。

私たちは「ロマンとソロバン」の両立を掲げ、
靴づくりを通して、誠実という価値を届けていきます。

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