社長のブログBlog

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靴の履き心地は、底付け(つりこみ)で決まる。

ヒール、本底(地面に接する)、中底、靴型(木型、ラスト)、
カウンター(かかと補強芯)、製甲(アッパー)、先芯(爪先補強芯)

それぞれのパーツに何材を使うのか?
本底、中底、アッパーの貼り合せ方法は?
つりこみに機械を使うのか?

上記質問の回答によって、靴の値段は、何十倍にもなる。

当社の答えは、製甲は革・接着剤で貼り付け(セメンテッド式)
爪先つりこみ(トーラスター)・かかとつりこみ(ヒールラスター)を使うである。




西成は、浅草に次ぐ100年以上の歴史のある革靴の産地だ。

機械化と良質な接着剤の普及で、靴は履き捨ての工業製品となった。

ワニ(革を引っ張る道具)とバフは、革靴メーカーの最後の砦。

本底との貼り合わの為、革アッパーの本底接着部分を
砥石で削ることをバフという。

革は、接着剤を塗るだけではくっつかず、「削る」工程が必要。
革の矜持だ。




爪先、かかとを機械でつり、残り部分をワニの方向、角度、引っ張り加減でつり込む。


底付け段階で足入れ問題は、すべて解決しないと駄目だ。

難儀なものは、機械でつった部分を外して、再度ワニでつりなおす「二度つり」で対処する。

つりこみの補填として
履き口、かかとへの乗せ甲
熱風機のローラーでの小皺伸ばし、木型へのいつかせ
ミスの繰り返し防止、つりこんだ者を特定するカラーマグネット

当社の秘伝、隠し味だ。













製甲へのこだわりを話そう。

秘密は、足を包む縫製(アッパー)の裏側にある。

製甲工程がシンプルか複雑かの違いだ。
完成品での裏側の確認は、難しい。

外観でも判断できることがある。

履き口(口まわり)のミシン目が見えるのか?

見えない→スキルを要する無双縫製

革の裁断面が、見える?

見えない→ ぶち切り(見える)以上に工程をかけている。




革靴の製甲は、とにかく手間暇がかかる。

折り代の革漉き、糊ぬり、テープ゚貼り、補強芯入れ、
折り込み、貼り合わせ、ハンマーでたたくなどなど。

繊細な作業の指先をご覧あれ。




裏材のはみ出た部分を縫った糸を切らないように市切り。

裏材のミシンかけ。
本革(表革)と裏材を重ねてのミシンかけ。
革は、穴が開く。やり直しがきかない。

革靴の製甲は、大量生産のパーツの組み合わせではない。

微調整をしながら作品を仕上げる「彫刻を彫る」に近い。










牛革と合皮の裁断の違いは、広げるか、畳むかだ。
合皮は、均一なため重ねて抜け、作業効率が抜群。

本革の裁断は、1枚ごとに「肌質」が違うので、
なんせ時間がかかる。

天然皮革の革キズこそ、「生きてき証」
ハラキズ、血筋、首シワ(トラ)、ホクロ、虫喰い
色ムラ、シボ、裏側の染色ムラ(写真参照)・・・・


しかし「証」は、風合いにも不良にもなる曖昧なものだ。


 
シングル布団ほどある半裁(牛の半身)を広げて、
目視で革のチェック。

方向・角度を変え、手で引っ張り、指で後ろから突いたりする。
革靴は、つり込む(引き伸ばす)のが、メインだ。

よって裁断時、革本来の伸長方向、繊維の引き締まりの強弱も加味しなければならない。

革を引っ張た時に、皮膚下の凹凸が浮かび上がることになる。

難儀だ。

とにかく、さする。指先がセンサーなのだ。

位置を決めタガネを置いて、裁断する。

歩留まりを高くする(捨てる革を少なく)のが、腕の見せ所。



裁断は、指づめ注意が絶対だ。

当社には、裁断スタッフが3名いる。内2名は、女性。

1日中の立ち仕事で、本革を女性が裁断することは、
業界では、貴重なことだ。

会社のちょっとした「自慢」である。

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